No.37 通り過ぎない

ありがたいことに、貴重な講演を拝聴する機会をいただきました。

ご講演くださったのは、ヤングケアラーとして歩んでこられたご自身のご経験から、現在はヤングケアラーの支援活動を行なっていらっしゃる、一般社団法人 ヤングケアラー協会代表理事の宮﨑成悟様です。

『ヤングケアラー当事者の人生から考える支援のあり方』をテーマに90分の深いお話を伺うことが叶いました。

 

たくさんの心に残った言葉と教えの中で、一番印象に深く残った言葉があります。

 

「通り過ぎない」

 

まずは、宮﨑成悟代表理事の背景をお伝えさせてください。

中学生の頃にお母様が病におかされ、徐々に寝たきりの生活となられたのだそうです。

お父様は家族を支えるためにお仕事でお忙しい中、3人の子供たちでお母様を介護しながら家事と勉強を両立する毎日。

そのような中、定期的に往診に来てくださる先生、介護士さん、ヘルパーさんの関わりに安心感を覚えたそうです。

 

「往診の先生は、通り過ぎないで、最近勉強はどう?と声をかけてくれました」

「介護士さんは、僕の分まで洗濯してくれました」

「ヘルパーさん、内緒で僕たちの分の料理をつくってくれました」

 

まるで暗い森の中、目の前に一本の道しかないと思い込んでいた世界。

そこに大人が照らしてくれたことで、何本もの道が見えました。

そのように語ってくださいました。

 

もしも、彼が出会った大人が、淡々と与えられた任務を全うするだけの人だったら…

もしも、彼が出会った大人が、目の前を通り過ぎるだけの人だったら…

考えるとゾッとします。

 

温かな気持ちを言葉や態度にして関わってくれた信頼できる大人の存在。

それが、「通り過ぎない」ということだと理解しました。

 

そばに寄り添い一緒に考えられる人になれますよう、この言葉を刻印し、自分にできることをためらわず、周りに目と心を配って行くことを誓いました。

 

Emiko Manners Academy

代表 小林 恵美子

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