ふとした瞬間に、その方の本心が表れるものです。
よく研修や講演会でお話しするエピソードがございます。
数年前の話なのですが、近所の焼きたてのパン屋さんで買い物をしたときのことです。
そのパン屋さんは行列のできる人気のパン屋さんで、その日もお店から道路まで行列が続いておりました。
私は小さな娘と一緒に並んでいました。
娘はお店の木の柵からお庭の植物を眺めたり、石ころを摘んだりして遊んでいましたが、疲れたのか、柵にもたれかかり始めましたので、危ないからこっちにおいでなどと言いながら二人で待っておりました。
しばらくすると、「ドスッ」と大きな音。
娘が柵にもたれた拍子に、木の柵がドスッと音を立てて落ちてしまったのです。
申し訳ないことをしてしまった!
幸い娘には怪我はなくてよかった!
お店の方に謝りに行こう!
一瞬で色々なことを考え、すぐに行列から外れてパン屋さんの入り口へ向かいました。
ドアを開けるとスタッフの方が近寄って来てくださいました。
私が事情をお伝えしてお詫びすると、間髪入れずにこのようにおっしゃったのです。
「娘さんにお怪我はありませんでしたか?」
大丈夫だということを伝えると、
「修理が必要だと思っていたところですので、どうかご心配なさらないでください。
こちらこそ申し訳ございませんでした。」
嫌な顔一つせず、壊れた柵のことは一旦横に置いて、まず、娘の様子を気遣ってくださいました。思いも寄らない素晴らしい対応に、私は心から感動いたしました。救われた…と安堵しました。
不測の事態に対して、なかなかできることではありません。
その方の温かな言葉から、思いやりあふれる人間性と、仕事に対する真摯な姿勢を感じました。
たとえ正しい敬語が話せたとしても、そこに心が伴っていなければ何の意味もなく、むしろ慇懃無礼だと私は思います。
言葉づかいは心づかい。
それを肝に銘じ、相手に誤解を与えないよう、正しい敬語をしっかりと身につけることを大切にしながら、心が伝わる言葉選びを意識することが大切です。
話は戻りますが、そのスタッフの方のおかげで私がほっとした表情になったので、気まずそうにしていた娘もニコッと笑顔になりました。
素晴らしいご対応を本当にありがとうございました。
うわべだけきちんと礼儀正しくお客様に対応しても、ふとした瞬間にこそ、本心が表れます。
家族、友人、知人、部下、上司、サービスを受ける客の立場など、全ての場面において、人々の喜びの種となる生き方を目指していきたいものです。
そして、この話にはまだ感動の続きがあります!
続きは、ぜひ明日のコラムをご覧くださいませ。
Emiko Manners Academy
代表 小林 恵美子